古流探究録「抜打」

英(はなぶさ)です。ブログを見に来ていただいてありがとうございます。

にわかに汗ばむ日も増えてきました。稽古の時には積極的に水分補給をして体調管理に努めましょう。

そして、明日からは居合道の合宿で淡路島に行ってきます。

また様子をお伝えできたらと思ってます。

では、古流探究録、十一本目――『抜打』をお届けします。

まずは理合から見ていきます。


■理合(原文)

吾が正面に近接する。対座する敵の害意を認めて、直ちに真向より抜き打ちにして勝の意なり


■ 動作(要点抜粋・口語訳)

正面に向かって正座する。
左手で鯉口を切り、刀を抜きかけながら(刃は上に向ける)、両足のつま先に力を入れて膝を伸ばし、立ち上がる。

そのまま刀を右斜め前へ水平に抜き、左肩の外側に向かって刀先を差し込むようにして、諸手で上段に振りかぶる。
(このとき腰を後ろに引かず、上体は真っ直ぐ上にあるように意識する。)

同時に、膝を前へ乗り出すような気持ちで体を進め、敵の真向に対して刀を振り下ろす。

斬り終えたら、刀を右に開いて血振りを行い、そのまま納刀に入る。
納刀しながら、腰を落とし、最後は踵の上に臀部を下ろして納め終える。


■はなぶさ 注意点

この業は、目の前に敵がいる間合い(超接近)で行うことが前提となります。
遠くの敵を斬りに行くのではなく、すでに間に入っている状態であることを意識することが重要です。

動作としては、前に抜き出し、そのまま頭上に振りかぶり、真向より斬り下ろします。
この一連の流れが分断されると、抜打の意味が失われてしまいます。

特に注意すべきは拍子です。
立膝の部『真向』が二拍子であるのに対し、抜打は三拍子とされます。

しかしこれは動作を三つに分けるという意味ではなく、
👉流れの中に拍子がある
と捉える方が自然です。

・抜き出し
・振りかぶり
・斬り下ろし

それぞれが独立するのではなく、
一つの流れの中で繋がっていることが重要です。

また、斬り下ろしの際に膝を左右に開き、腰を落とす動作は、
単に形を整えるためではなく、
👉身体全体で斬るための動き
と考えるべきです。

ここで腰が落ちず、上体だけで斬ろうとすると、
刀の重みが乗らず、形だけの動きになってしまいます。

抜打は速さを競う業ではなく、
👉抜いた瞬間に勝負が決まっている状態を作る業
です。

そのためにも、動作を急ぐのではなく、
流れを途切れさせずに行うことが肝要です。


■ 探究録

ここでは、制定居合十二本目『抜打』との比較から、本業の位置づけを考えてみます。

制定の『抜打』は、相対して直立している敵が突然斬りかかってくるのに対し、
一歩退いてその太刀を空振りさせ、機を見て真向より斬り下ろす業です。

すなわち、
👉「外して、勝つ
構造を持っています。

一方で古流の『抜打』は、すでに間に入っている状態から始まり、
退くことなく、その場で抜き上げ、斬り下ろす。

👉「抜かせずに、勝つ
業であると言えるでしょう。

理合を見る限り、両者は似て非なるものです。

しかしながら、いずれも頭上に振りかぶり、真向から斬り下ろす形を取るため、
動作の印象だけを見れば、同一の業として捉えてしまうこともあります。

ここに落とし穴があります。

見た目の一致に引きずられると、
古流の『抜打』が、知らず知らずのうちに制定居合の動きへと寄ってしまうのです。

特に、制定の
👉一度受けてから斬る
👉間を外してから入り直す

といった意識が入った瞬間、本来の理合から離れてしまいます。

古流の『抜打』は、制定居合の『正座』版ではありません。

むしろ、
👉間を外さず
👉起こりを捉え
👉その場で勝負を決する

ための業であると考えるべきでしょう。

制定居合と古流居合の違いは、単なる形の差ではなく、
勝負の捉え方そのものにあります。

制定居合が、敵の動きに応じて間を見切り、状況を整理して勝つのに対し、
古流居合は、敵の起こりを捉え、その前に勝負を決します。

言い換えれば、
👉制定は「外して勝つ」
👉古流は「起こりを断って勝つ」

この違いです。

したがって稽古においては、
敵の攻撃を見てから動くのではなく、
👉すでに勝負の中に入っている状態
を前提として動くことが重要です。

その一刀は、動きに対してではなく、
👉その起こりに対して出されるもの

でなければなりません。

この違いを明確に意識することで、
形に引きずられることなく、本来の理合に近づくことができるはずです。

教本や動画を通して見えてきたものもありますが、
最終的にそれを掴めるかは、やはり稽古の中にあります


■英より

もし居合や刀について疑問があれば、
気軽に送ってください。

ひとつひとつ、丁寧に考えていきます。

▶ 英の居合質問箱
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