英(はなぶさ)です。
今夜の刀剣止水は、番外編――名物茶釜「平蜘蛛(ひらぐも)」をお届けします。
「刀剣止水なのに茶器?」
そう思われる方もいるかもしれません。
実はこれ、現在放送中の大河ドラマ“豊臣兄弟”で「平蜘蛛」が登場し、思わず筆が走りました。
持ち主は、戦国最大級の梟雄とも呼ばれた松永久秀。
信長が幾度も所望しながら、最後まで手放さなかった名物。
そして久秀最期の瞬間と共に、“爆ぜて消えた”と語られる幻の茶釜――平蜘蛛。
刀剣ではない。
けれど平蜘蛛には、名刀に匹敵するほどの執念、権威、そして戦国の美学が宿っています。
今夜は少し寄り道をして、
「なぜ一つの茶釜が、武将たちをそこまで魅了したのか?」
松永久秀という人物と共に、探究してみたいと思います。
――兼光、平蜘蛛を語る
大和国――信貴山城。
城の奥で、ひっそりとその釜は佇んでいた。
兼光は静かに腰を下ろす。
名物――平蜘蛛。
城一つ買えるとまで言われた茶釜。
だが兼光の目を引いたのは、その値ではない。
ゆっくりと触れる。
ずしりと重く、冷たい。
鉄肌は煤けた黒鉄色。
茶釜とは思えぬほど低く平たい姿は、まるで地を這い獲物を待つ蜘蛛の腹部。
――平蜘蛛。
いや。
だが兼光は、ふと思う。
これは“蜘蛛”ではなく――
“雲”なのではないか、と。
地を這う妖しさと、雲のように掴めぬ幻。
信長が求め、松永久秀が最後まで手放さなかった理由。
その答えが、この黒い鉄の奥に沈んでいる気がした。
――英、平蜘蛛を想う
高校時代、歴史の授業で強烈な印象を残した人物がいます。
「松永久秀」
そして、私の脳裏に焼き付いた言葉があります。
「爆死」
かのの織田信長は松永久秀を徳川家康に紹介する際に、
「誰も成し得なかった三つの悪事を成し遂げた男」と語ったといわれています。
- 主君・三好長慶への謀反
- 将軍・足利義輝暗殺への関与
- 東大寺大仏殿焼失
まさに悪名の塊。
けれど、不思議なのです。
本当に、久秀はここまでの極悪人だったのでしょうか?
調べていくと、通説とは違う久秀の姿が見えてきます。
久秀は、三好長慶には極めて忠実だったとも言われています。
東大寺焼失も、意図的な放火ではなく戦乱の結果という説が強い。
さらに茶の湯を愛し、文化を理解し、神仏への信仰も深かった。
冷酷な梟雄。
だが同時に、美を解し、誇りを捨てず、最後まで己を貫いた男。
だからこそ私は、久秀に“ダークヒーロー”的な魅力を感じます。
信長に頭を下げながらも、最後まで平蜘蛛だけは渡さなかった。
あの黒い茶釜には、
権力ではなく――
「己だけは曲げぬ」という、松永久秀の魂そのものだったのかもしれません。
竹中直人さんの松永久秀圧巻でした。吉田剛太郎さんの久秀もよかった。信貴山城の爆破シーンは欠かせないですよね。
■英より
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