制定居合研究会~番外編~抜きつけ

 前回まで説明してきました制定居合について、説明の都合上、割愛させてもらった点が複数あったので、今回、番外編として主要な抜き付け、血振り、納刀について掲載します。

 居合の命『抜きつけ』

 剣術には剣道の様に最初から刀を構えた状態で戦う時と、抜刀と同時に敵に仕掛けていく二つのケースが存在します。勿論、居合は後者にあたります。古来、剣術者同士の戦いにおいてはこの抜き付けがスムーズにできるかどうかが、生死を分けるわけです。
 現在でもこの抜き付けは居合抜きと言われるように居合を示す代名詞となっており、居合道家にとって、この抜き付け一つを見るだけでも相手の技量を推し量る材料となっています。

 1 正座にすわる

 抜き付けは正座に限定されたことではないですが、ここでは1本目『前』で説明します。

 制定居合の正座は、両膝頭の間を一拳分と定められています。手は中程に指をそろえた状態で置きます。

 2 鯉口を切る

 鯉口とは鞘の入口にあたる部分のことです。形が鯉の口の様に見えるのが由来です。

 鯉口の切り方には複数ありますが、基本的には親指で鍔を押し上げるようにして切ります。

 3 腰を上げ、刀を抜く

 どうしても初心者のうちは鞘がうまく引けず、右手だけで抜いてしまうことが多いです。左手を使って鞘を引くことでスムーズが抜き付けが可能になります。

 4 抜き付け

 制定の一本目では相手の『こめかみ』めがけて抜いて行きます。

 抜き付けと抜き打ち

 全剣連居合の教本を読んでいると『抜き付け』と『抜き打ち』という言葉が出てきます。


 具体的には1本目『前』2本目『後ろ』……抜き付け

 6本目『諸手突き』7本目『三方切り』……抜き打ち

 この違いは何かというと

 斬るか斬らないか

 補足すると抜き付けは相手への牽制が目的であり、相手を斬っているわけではないので、こめかみ付近に切っ先が到達するとそれ以上切っ先は動きません。
 一方、抜き打ちは一刀のもと相手を仕留めるのが目的であり、6本目、7本目ともに頭上から顎まで斬ります。よって切っ先は相手の頭上に到達してから、顎先までの十数センチ下方に斬り下がります。

 けっこう、混同しがちなのでここを押さえて稽古するのが上達の近道です。

 抜き付け……斬らない
 抜き打ち……斬る

 

 ぐらいの認識でいいと思います。

イラストについては新紀元社の『剣技・剣術説』(牧秀彦著)を参照しています.