小説版のるろうに剣心~最終章~を読んでみました。
小説版ならではの面白みがある
原作、映画と続けて見てきて小説版も魅力的な作品となっています。
両作品とも当然ながら、幕末の人斬り『緋村剣心』が主人公なのですが、『Final』では剣心、『Beginning』では緋村という名前で物語が展開され、同じ人物でありながら、まるで別人のように表現しています。
小説ならではの心理描写
映画では表現できなかった登場人物たちの心理描写が巧に描かれています。
『Beginning』の冒頭で剣心が京都見回り組の清里(窪田正孝:演)を強襲するシーンでは映画の中では主人公である剣心の目線から描かれていますが、小説では清里の目線から描かれ、人斬りに襲われる恐怖、そして幾度も太刀を受けながらも生きようとする執念、そして故郷に残してきた最愛の人を思う情愛がひしひしと伝わる名シーンとなっています。
また、終盤、敵の罠にはまり、五感を奪われる戦闘シーンでは映画では第三者支点で描かれるため、戦闘での苦悩が伝わらないですが、小説版では剣心の視点から描かれ、『見えない』『聞こえない』中でも状況が良くわかります。
また最後の最愛の妻、緋村巴との別れのシーンでは原作と映画では違った表現がされています。
ネタバレにはなりますが、映画では負傷した巴を胸に抱き、最後の力を振り絞るかのように巴が短刀で剣心の頬に刀傷を残します。これは原作では偶発的に傷をつけるのに対し、映画では故意に傷つけています。
こちらも小説版ではかなり丁寧に心理描写されており、巴と剣心の情愛の深さが感じられました。
『るろうに剣心』の世界観を十二分に堪能させていただきました。