英(はなぶさ)です。
いつもブログを見てくれて、ありがとうございます。
寒暖の差が大きい今日この頃ですが、皆さん、稽古は順調ですか?
さて、今回お届けしますのは、古流自由研究 正座の部 五本目――「八重垣」です。
正直、なかなかにむずかしい業で、どう説明したらいいか、結構悩んでます(笑)。
しかし、だからこそ味わい深い。今日は一緒に古流の世界を見ていきましょう。
五本目 八重垣
■ 理合(原文)
我が正面に対座する敵の首(または顔、腕)に斬り付けたるも不十分にして、
敵後退したるを更に一歩追い込みて斬り倒す。
しかし致命に至らず。
その倒れたる処より、我が右の脛に薙ぎ来るを、
我れ受け止めて勝つの意なり。
『前』同様に斬り付けるも致命傷に至らず。
瀕死の状態から切りかかっているのを防ぎ、踏み込んで切り倒す。
攻守一体の業です。
■ 動作(要点整理・口語訳)
① 正面に向かい正座で座る
抜きかけつつ右足を踏み出し、一文字に抜きつけ。(ここまでは1本目『前』に同じ)
② 直ちに中腰にて低く立ち上がり、
左足を右足の一歩前に踏み出しつつ諸手上段へ。
右膝を跪くと同時に切り下ろす。
③ 刀を右に開き血振い、納刀(鍔元二、三寸ほど残す)。
④ そのまま左足を徐々に退き中腰となりつつ再び抜きかける。
右爪先と交差する辺りで、急速に左足を大きく一歩後方へ退きつつ抜き払い。
⑤ 右膝を刀にて囲う(脛囲い)。
このとき刀刃はやや左前、左手は腰。
⑥ 左側より諸手上段に振りかぶり、
左膝を前に進めて地につけ、右足を前に出して打ち下ろす。
⑦ 一本目と同様に血振い、納刀。
■ はなぶさ 解説
やはり八重垣は、やるべきことが多く、難しく感じる業です。
特に序盤。
抜き付けから左足を踏み出し、上段から切り下ろすまでの一連の動き。
ここで大切なのは、
いかに上体を低く保てるかです。
大きく上へ浮き上がってしまうと、業は途端に崩れます。
見た目にも不格好になりますし、何より理合が失われます。
低い姿勢を維持したままの上下動。
これは想像以上に難しい。
だからこそ八重垣は難しく、そして価値があるのだと思います。
ここで一つ考えてみたいのは、
なぜ八重垣が「五本目」なのか、ということです。
私たちは一本目『前』で基本の姿勢を学び、
二本目から四本目で四方の敵への体の転換を学びました。
その次に置かれているのが、この八重垣。
単なる応用ではない。
ここには、先人の意図があるはずです。
一つは「間合い」。一太刀目で相手を仕留められたなかった時点でそれは負けと同じ。
敵が後方に退いたなら、間髪空けずに追撃する攻めの姿勢。
八重垣は、間を詰める業でもあり、間を測る業でもある。
もう一つは「守りの姿勢」。
脛囲いは受けではなく、払い。
しかしその形は、防御の姿をとります。これは立膝の部2本目虎之一足や座業の部 脛圍と同じ動きですが、単体で学ぶのではなく、組み合わせることで使用用途をわかりやすく説いています。
攻めの中に守りを含み、
守りの中に攻めを宿す。
五本目にして、
攻守一体を学ばせる。
そう考えると、八重垣の真意が少し見えてくる気がします。
一本目から順番に稽古することで自然と身についてくるプロセスが見えてきます。
■はなぶさ ひとこと言わせて
八重垣は、
「前」の応用であり、「一撃で仕留められなかった場合の対処法」を教えてくれています。座業の部 1本目の『霞』もそうですが、一刀目を失敗するとそれは本来負けなわけですが、間髪あけずに相手を攻める姿勢を残しておくのが居合の神髄であると思います。
井村先生いわく、この敵の攻撃を受けた刀を「ほまれ刀」といって名誉ある刀だそうです。通常戦に出た刀は刃こぼれを理由に廃棄されるのが通常だとか、主人の身を守った『ほまれ刀』は貴重なのだとか。
敵を倒すことも重要ですが、敵から身を守ることもまた大切です。次回予定している『受流』もまた身を守る業。少し楽しみになりませんか?
古流自由研究 第3段 「八重垣」いかがでしたか? 居合をやっている人もそうでない人も少しでも興味をもってもらえれば幸いです。







