十本目『四方切り』
前進中、四方の敵の殺気を感じ、機先を制してまず刀を抜こうとする右斜め前の敵の右こぶしに「柄当て」し、つぎに左斜め後ろの敵の「水月」を突き刺し、さらに右斜め前の敵、続いて右斜め後ろの敵、そして左斜め前の敵をそれぞれ真っ向から切り下ろして勝つ。
四方を囲まれた状態から始まる
四方を敵に囲まれた絶対的ピンチの状況からの脱出です。
1 右斜め前の敵(A)を柄打ちする
右足より正面に向かって前進し、左足を踏み出したとき、右斜め前の敵に振り向くと同時に両手をかける。鞘ごと突き出して、刀を抜こうとした敵の右こぶしを右足を踏み込むと同時に強く柄の平で打つ。
2 左後ろの敵(B)を突き刺す
直ちに左手で鞘引きしながら左斜め後ろの敵に振り向き、切っ先が鯉口から放れると同時に、左回りに回って敵に対し「一重身」となり、「ものうち」付近の「棟も左の乳に当てる」間を置くことなく左足を踏み込むと同時に左手を内側に絞りながら右肘を伸ばして敵の「水月」を突き刺す。
3 右前の敵(A)を斬る
右斜め前の敵に振り向き、刀を引き抜きながら頭上に振りかぶると同時に左手を柄にかけ、右足を軸に右回りに回って敵に向き直ると同時に左足を踏み込んで真っ向から切り下ろす。
4 右斜め後ろの敵(C)を斬る
右斜め後ろの敵に振りむきながら左足を軸にして受け流しに振りかぶり、敵に向き直ると同時に右足を踏み込んで真っ向から切り下ろす。
5 左斜め前の敵(D)を斬る
後ろの敵に振り向きながら右足を軸にし左回り、左足を左にふみかえて脇構えになりながら受け流しに振りかぶり、右足を踏み込むと同時に左斜め前の敵を真っ向から切り下ろす。
10本目は4人の敵と制定居合の中で一番多くの敵に囲まれています。
ただ、動きはシンプルなので、ゆっくりと稽古すればさほど難しくはない技となっています。
イラストについては新紀元社の『剣技・剣術説』(牧秀彦著)を参照しています