七本目『三方切り』
前進中に、正面と左右、三方の敵の殺気を感じ、まず右の敵の頭上を抜き打ちし、つぎに左の敵を真っ向から切り下ろし、続いて正面の敵を真っ向から切り下ろして勝つ。
前進中、三人の敵に襲われるのは前回の6本目『諸手突き』と同じ、前回は前と後ろの2方向であったが、今回は3方向から敵が攻めてくる想定。
進行方向に対して、A、B、Cの順番に斬っていく。
もちろん相手もただぼんやりと斬られるのを待っているわけではないので、隙あればこちらを斬ろうと狙っていると考えなければならない。
前進中に殺気を感じ、敵の頭上を抜打ちにする想定はやはり6本目と同様で、今回も前方の敵Cを先に斬ろうと刀に手を掛けたものの、先に右敵Aがわずかに早く動いたので直前に右に方向転換する。
正面の敵をけん制しつつ、左の敵B に向き直り、斬り下ろす。
左足を軸に正面の敵Cに向き直り、右足を踏み込むと同時に真っ向から切り下ろす。
右足を引きながら、諸手左上段となり、残心を示す。
仮想敵を意識する
本ブログではイラストで敵を表現し、わかりよいようにしているが、実際の稽古では当然のことながら眼前に敵は存在しない。あくまでも自身の頭の中だけに存在する仮想の敵である。
仮想敵は自身と同じ体格と定められているが、自身の成長と伴い敵もより強く成長していく。つまり熟練度が増すに従い、仮想敵も隙の無い動きをしてくるわけである。
当初はただぼんやりと『どうぞ、斬ってきてください』と立ち尽くしているだけの敵が、次第に実態を持ち、『隙があればこちらも切るよ』と殺気を放ってくる。
試合場でうまいと思わせる人の演武を拝見すると、まるでそこに人がいるのではないかと錯覚することがある。それは演武者の目線であったり、体捌き、剣捌きであったりするのだが、まずは自身の中で仮想敵をイメージし、練り上げ、対話し、実像に近いものにしていく。
『三方切り』や後に紹介する『四方切り』は初心者でも仮想敵をイメージしやすく取り組みやすいのでぜひ、仮想敵を意識して稽古してみてください。
イラストについては新紀元社の『剣技・剣術説』(牧秀彦著)を参照しています